先週は、建築士の竹内恵子さん、工事に関してお世話になる有賀製材所さんと打ち合わせ・契約をしてきました。この先はもちろん大きな変更はできませんし、そうならないようにじっくり煮詰めたプランなので、あとは完成にむけて着実に進めて行くのみです。

そんなわけで、今回は設計にあたっての自分の考えも交えながら、工房のプランを紹介したいと思います。


良い工房 ≒ 作業効率の良い環境

いくつかの工房があって、好きなのを選んでいいよと言われたら、もちろん作業効率の良いものを選びます。効率よくスムーズに作業できる環境なら、より速く、より精度よく加工ができ、最終的には「出来ること」が増えます。

また「作業効率」といっても、働くのはロボットではないので、工房全体の快適性も重要です。室温、風通し、明るさなどに気を使えば、作業に大きく影響するのは言うまでもありません(材木にとっての快適性もあります)。

工房(=不動産)というものの性格から言っても、けちって変な妥協をするとあとで苦労します。いま選べる中で最高の選択になるように「家具製作(主に木工)において作業効率の良い環境とは具体的にどんなものか?」を常に考えながらプランを練っていきました。

工房の立地条件

設計の前にどんな場所に建つか?という「立地条件」が重要ですが、自分の思い通りになりにくい要素でもあります。幸い、僕が借りることになった家のそばの土地は、良い工房のための条件を多く満たしてくれています。

土地を北東から見た図。隣の家は空き家。

その筋(?)の方には有名と思われる木工家になるためのQ&Aの項目などを参考に、独自の条件を加えて自己評価すると、だいたいこんな感じです。

条件 評価 コメント
総合評価 ★★★★☆ 作業環境としては理想的 ちょっと山奥すぎて利便性は損なわれ気味
景観・自然環境 ★★★★★ 静かな山の中 気候も穏やか
騒音 ★★★★★ 民家が少なく距離があるため問題なし
ゴミ ★★★★☆ 木っ端や木くずは燃料として活用 捨てに行く場合は少し面倒
動力(低圧電力) ★★★★★ すぐ近くまで来ている
★★★★☆ 公営水道でないので自己管理が必要 水質は◎
土地価格 ★★★★★ 5k~10k/坪 程度
家からの距離 ★★★★★ 徒歩1分
知り合いの多さ ★★★★★ 感謝
工房へのアクセス ★★★☆☆ 初めての方にはちょっと大変かも ドライブ好きなら…
都市からの距離 ★★★☆☆ 近いような遠いような
ホームセンター ★★☆☆☆ 気軽に行ける距離で品揃えの良い店がなくて残念

多少の欠点はあれど、ここでやっていこう!と思える「しっくりくる場所」ということが最大の決め手です。

完成予想図

最終図面を元に、SukechUpで簡単にモデルを起こしました。
先ほどの土地の写真とは反対方向(南東)から見た図です。

土地は周囲を土手に囲まれた窪地です(むかし洪水があり、護岸・整地した影響)。若干、湿気の心配はありますが、ジメジメした感じはありません。

工房の前の道は旧道で通り抜け出来ませんが、工房までは大きめのトラックでも入れます(大型車の出入りも大切な条件ですね)。現行の県道は、この図では描かれていませんが、工房の裏を通っています。

もうちょっと近づいてみます。3D楽しいですね(半分遊んでる)

壁や屋根の色はこんな感じに黒っぽくするつもりです。
工房は県産材を多く使った木造軸組のいわゆる「木の家」ですが、内も外も木の色というのはどうもメリハリがなくて好きではありません。

黒という色は派手さはありませんが、独特の存在感があります。高山の古い町並みのような和風建築の黒もいいですよね。

ベタ塗りじゃなく、微かに木目の見えるオイル塗装で温かみのある黒なので、森の景観にも溶け込みそうです。モノを生み出す場所として、よい意味での「ブラックボックス」的なワクワク感も狙っています。

正面(東)

正面から見るとこんなかんじです。
普段使いのドアとは別に、搬入出用の大きな開口を設けています。

間取り

工房の間取りはとてもシンプルです。
はじめは用途を決めて部屋を分けるようなプランも考えていましたが「『ただの箱』くらいのほうが後々融通がきいていいよ」とアドバイスを頂き、実際いくつかの工房を見学しても同様のことを感じました。

間仕切りは最小限に抑えて、工房内の部屋は以下の4つになりました。

木工房 文字通り木工作業をするためのメインの部屋 20坪
鉄工房 溶接など火を使う作業ができる土間のような部屋 4坪
事務室 製図や休憩、応接の部屋 工房内はどうしても埃が舞い散るため「埃との隔離」という意味でも重要な部屋 4坪
ロフト 建築士の竹内さんからの提案でできた部屋 収納や簡単な寝泊まりに使用する予定 5坪

建築面積28坪(≒93m2)、延床面積33坪(≒109m2)です。

左=木工房 右上=事務室 右下=1F:鉄工房 2F:ロフト

平面だと右側の部分がわかりにくいので、断面図を。

左=事務室 右上=ロフト 右下=鉄工房

ロフトは高さと広さを確保するため、少し事務室側に飛び出した構造になっています。ここがどんな空間になるか、ちょっと楽しみです。

工房に必要な広さ

「必要な広さ」については初期段階でずいぶん悩みました。

木工房シンプルさんの工房建屋についてにも書かれていますが、工房の大部分は大型機械の設置スペースとなります。そこで、必要な木工機械をすべて書きだし、動線確保や機械の送材方向、集塵なども考慮した「設備レイアウト」を組んで、そこから具体的な面積をはじき出すことにしました。

外側に壁を立ててから考えるのではなく、中身のレイアウトから考えることで、現実的なバランスが掴めました。そして、予算の面からも妥当なラインとして、最終的に20坪(階段などのデッドスペースを除くと有効面積は18坪くらい)というサイズになりました。

同じようなの工房の中では、平均より少し広いくらいでしょうか?
いまは少し余裕を感じられるくらいですが、 将来的な設備の増加や、複数人での作業、ワークショップ的なことをする場合にも対応できるので、自分にとってはちょうど良い広さだと思います。

木工房の特徴

 メインの木工房については、快適な作業環境にするために考慮した部分がいくつかあるので、もう少し詳しく解説します。

天井高

とても基本的なことですが、天井が低いと大きな材料を扱うときに苦労します。高いところで4m、低いところでも3m程度になるようにしました。

採光

鯛工房さんの記事にも書かれている通り、木工房の採光では、強い日光が木に与える影響や、眩しさを考えると、直射日光を取り込まないほうが良いと思っています。しかし、逆に光を遮りすぎて昼間から照明を付けないと作業できない薄暗い工房になってしまうことも考えられます。

そこで採光には特にこだわり「直射日光を取り入れず、かつ自然光を利用して日中は照明に頼らない」ことを目指しました。

具体的には、軒の出や窓の位置・サイズの調整、天窓(トップライト)の設置などです。天窓は、そのままだと直射日光をもろに取り込んでしまうので、白いブラインドで光を拡散します。わずかですが節電になりますし、昼間は自然光を浴びるほうが気持ちいいです。

正面(東側)は軒を9尺も出しました。日光を遮るだけでなく、雨がかからない軒下はとても役に立つので、一石二鳥です。

SukechUpモデルを使った影のシミュレーションや、VELUX Daylight Visualizerという採光プランニングソフトは、天窓や窓の効果を見るのに役立ちました。ただ、あくまでも画面上での表示なので、実際どのように感じるかは完成してみないとわかりません。

理想は日中の照明利用ゼロですが…どうなるでしょうか。

室温・湿度管理

長野はとくに寒さ対策が重要です。ただ辛いというだけでなく、寒すぎて接着や塗装ができないという事もあります。

断熱は効率と施工性を考えて、外断熱を採用しました。また、ペチカというレンガの蓄熱を利用した暖房を設置するのですが、これは広い空間でも均一に暖めてくれる優れものです。

南面の地窓

暑さ・湿気対策として、採光と同時に窓の風通しも考えました。
東・西は直射日光を防ぎながらなるべく大きなサイズの窓を入れています。南面は採光より通気重視で地窓だけをつけました。また、天窓は通風効果も高いそうなので、自然換気に期待したいところです。

竹内さんの協力

今回、大変お世話になった竹内恵子さん(アトリエARK)は、独自のセンスで居心地の良い住宅を設計すると評判の建築士さんです。ここまで工房の設計について、さも自分ひとりで考えたかのように書いてきましたが、もちろん竹内さんの協力無しには語れません。

工房の機能に関してはこちらで希望したことも多いですが、竹内さんには専門的な視点と普段の住宅設計のセンスで全体を見てもらい、アドバイスや提案をいただきました。例えば、ロフトを作るという考えは僕の頭にはなかったのですが、竹内さんが「使える隙間」を見つけて提案してくれたおかげで空間の有効活用ができました。また、予算との兼ね合いなど、ややこしい相談に乗っていただけたのも助かりました。

今回、勉強していろいろ覚えたとはいえ、建築関係はほぼ素人ですから、ひとりでやっていたら、こんな良い形にはまとまらなかったと思います。

これから

ず〜っと練ってきたプランなので、すでに頭の中(とMacの中)では完成しているのですが、これを現実の世界で完成させなければいけません。

基礎から建前までは、有賀製材所さん(県産材をたくさん使って地域に根ざした仕事をしているこれまた素敵な工務店)にお願いしています。

そこから先のサッシ取り付け、建具製作、外壁仕上げ、内装、ペチカのレンガ積みなどなど…は自分でやります。それと、機械を入れたり、材木の調達をしたり…ということもそろそろ考えないといけないので、やらなければいけないことが急激に増えそうです。

「最近、暇で暇でしょーがない!」という人はぜひ来てください(笑)