明けましておめでとうございます。

はい。その顔はおそらく「なんで新年早々ビートルズの話?」というご質問ですね。僕からの謎の年賀状を受け取って、わざわざブログのURLを入力して読んでいる心優しい方、もしくは暇な方、もしくは重度のビートルズファンの方はお分かりかと思います。

しかし、何かの拍子でこの記事に迷い込んでしまった方にも分かるように書いてありますので、安心してお読みください(読みたいのであれば…)。


午年にちなんだ年賀状のアイデア…

僕は毎年どこか一捻りした年賀状をつくろうと心がけているのですが、今年はいつも以上にしょうもないアイデアが浮かんでしまいました。まず、年賀状に書いた解説をお読みください。

「馬の脚は走る時に地面から離れているか?」この謎を解明したのは英国の写真家エドワード・マイブリッジ。彼は、疾走する馬を撮るために露出時間1/5,000秒という高速の連続撮影装置を開発した。これに触発された発明家のエジソンやリュミエール兄弟が、実用的な動画の記録再生装置を考案し、「映画」という新しい文化が生まれることになる。マイブリッジがいなければ、ビートルズ主演の「A Hard Day’s Night」や数々の名画も撮影されていなかったかもしれない、という新春の豆知識。

文中に出てくる、マイブリッジの馬の連続写真とビートルズ「A Hard Day’s Night」がこちら。どこかで見たことがあるんじゃないかと思います。

左:エドワード・マイブリッジ「The Horse in Motion」 / 右:ビートルズ「A Hard Day’s Night」

今年の年賀状は、この2つを組み合わせてみよう、という趣向です。
先ほどの解説は後付のうんちくで、元の発想は

  1. 2014年の干支「馬」のネタ探し
  2. ⇒Google検索でマイブリッジの「馬」「連続写真」を発見
  3. ⇒ビートルズ「A Hard Day’s Night」「連続写真」を連想
  4. 「A Hard Day’s Night」「連続写真」「馬」にしよう!

というような、シンプルかつ安直なものです(笑)

つくり込んだ、細かすぎるパロディジャケット

巷に溢れるパロディの一例。

そんなわけでビートルズの4人の顔を、馬の連続写真に差し替えるというパロディジャケットを作ることにしました。しかし、アイデアは単純ですが天邪鬼で凝り性の僕は「どうせ作るなら、とことんつくり込んでみよう!」などと、余計なことを考えだしてしまったのです。

……その結果、ネタが妙に細かくて完成品を見ただけでは伝わらないという状態になってしまいました。

かといって、解説を長々と年賀状に書くわけにもいかないので、「堂々と役に立たないこと書いてても許される」というネットの特性を活かして、このブログで公開することにしたわけです。そもそも、ここまで読んでいる人がいるのかすら怪しいですが、そんな不安も「新年企画!」という特別感でふき飛ばしてあるので、もうなにやっても大丈夫です。

5つの鑑賞ポイント

さて、無駄話をしているとただでさえ少ない読者が、どんどん去って行きそうなので、手短にまとめました。

まず、オリジナルとパロデイの比較をご覧ください。

左:オリジナル / 右:パロディ(クリックで拡大)

いかがでしょうか。我ながら、なかなかの完成度の高さだと思います。
それでは、細部を5つの鑑賞ポイントとして解説していきます。

1.連続写真

ここは、ただ馬の写真を並べていけばOK……なんてことはありません。
オリジナルを見ればすぐに気づきますが、2段目中央のジョージが後ろを向いてるコマがあります。こういうビートルズパロディの基本中の基本は、オリジナルに敬意を払う意味でもちゃんと押さえておきたいところ。

これは例えば「Abbey Road」のパロディでポール役が誰に言われずとも靴を脱ぐようなものです。あまり例えになってないですね。はい。

horses_05

ちょっとまじめにデザイン的に見ると、似たパターンが続いて単調になるところを、わざと崩してアクセントにしていると思われるので、やはり2段目中央は後ろ向きのお馬さんが必要です。また同じく、1段目中央の(@_@)←こんな感じのジョンも少し変化があるので、止まっている馬を配置しました。

※ちなみに後ろ向きの馬の写真はオリジナルにはないので、新たに合成して作りました!

2.タイトル文字

青地に鮮やかな赤でちょっとチカチカするタイトル文字。
ここは「A HARD DAY’S NIGHT」のままでも悪くはないですが、とことんパロディ化するという意味では安易な流用は避けたいところ。年賀状の定番で出だしの3文字が同じ「A HAPPY NEW YEAR」を入れることにしました。

文字の差し替え部分は似たフォント(書体)を探すか、新しく作るしかありません。いろいろ試したところ、タイトルのフォントは「Baskerville」を横幅150%ほどに伸ばしたものとほぼ一致しました。イギリスの伝統的フォントなのでオリジナルもおそらくこれでしょう。「R」の足の部分などを見ると「Baskerville Old Face」のほうがより近いみたいですが、残念ながら持っていないので、これで手を打ちました。あと細かいですが、セリフ(ヒゲ)がながーくなっているので、同じように伸ばしてあります。

ちなみに「A HAPPY NEW YEAR」の「A」はネイティブ的にはおかしな表現なんじゃ……とご心配の方、ご安心を。ここはリンゴの呟いた”It was a hard day…’s night!”という言葉のおかしさに掛かっているとお考えください:D

3.録音方式の表示

ビートルズのアルバムはMONO盤とSTEREO盤が出ています。その2つを見分けるのが右上の録音方式の表示。ここもそのままにはできません。

オリジナルがMONO盤、STEREO盤とくると、パロディジャケットは果たして何盤?……そうですね!NISEMONO盤です!

オリジナルフォントは「Futura」の太いのを横に伸ばしたようにも見えるのですが、なんとも言えない感じで、太さもMediumサイズまでしか持っていなかったため、もう一つの候補「Gill Sans」にしました。「s」とか「e」はやっぱり「Futura」のほうが似てます。

4.レーベルロゴ

ビートルズの初期の所属レーベルは、EMI傘下のパーロフォンなので「A Hard Day’s Night」のジャケットの左上にも、でかでかとロゴマークが鎮座しています。しかし、これも勝手に「パーロフォン」を名乗るわけには行かないので別のものに差し替えます。

パーロフォンのスペルは「PARLOPHONE」。「PAR」とくれば「ODY」しかありません!パロディレーベル「パロディフォン」の誕生です。

「PARLOPHONE」のフォントはたぶん幅を縮めた「Avenir」です。
ロゴマークの部分はMotorajiのロゴを入れました。それっぽく見えるようにオリジナルに似せた加工をしています。ちなみに、ロゴマークの横にちらちらっとなにか見えますが、ここは「Gill Sans」で「TRADE MARK」と書いてあったので、そのまま再現しました。無駄に細かい!

5.バンドロゴ

最後にバンドロゴです。
このずんぐりした独特のフォントはどうやら既成のものではないようです。ジャケットを担当した新入りデザイナーが「ヘイ、ユー!バンドロゴの文字くらい自分で描きな!」とボスに言われたそうです。うそです。

ともかく、これは文字をひとつずつ作るしかありません。さらに、今回は馬ネタということで、文字を「THE HORSES」に差し替えたいので、オリジナルにはない文字も必要です。手間はかかりますがパロディの完成度を決める重要なポイントなので、いままで以上に手が抜けません(※かけた労力のわりに全く気づかれないポイントでもある)。

そこでまず各文字を分析して、このフォントの「ルール」を探すことにしました。文字の形を決める「ルール」がわかれば、それに従って新しい文字もつくる事ができます。幸いこのフォントは、パッと見てもなんとなく「ルール」がわかるくらい単純な形です。

分析の末、このフォントは「横11×縦9のグリッド(マス目)」で出来ている、ということが判明しました(「T」と「B」は例外で横が13です)。文字同士の間隔が1グリッド、「H」や「E」の縦線の幅が5グリッド、角丸の半径が0.5グリッドと2グリッド、といった具合です。

このルールを元に、オリジナルにはない「O」と「R」を作ってみましたが、まったく違和感ない仕上がり!その気になればアルファベット全文字だって作れます。

 これにて無事完成!

まとめ

このような細かい検証のを重ね、完成したのが今年の年賀状です。
すごいですね……自分でも呆れています。

多少正当化すると、デザインを勉強する上では「まねる」という作業がとても為になります。そういう意味ではバンドロゴの分析が一番おもしろく、このジャケットをデザインした方の思考をなぞるような感覚がありました。

まあ、それでも大半は無駄な作業でしたが(笑)
息抜きにとことん無駄なことするのって楽しいんです。

ところで、デザインとは関係ないのですが、今回「A Hard Day’s Night」のジャケットを改めてじっくり見て、印象に残ったのは

ポールの表情が全体的にひどい(とくに中央)

ということでした……以上です。
それでは、今年もよろしくお願いいたします!

The End.